今回のレポートでは,去る11月18日(土),19日(日)の2日間に渡り,香港で開催された「シルバー・ヘアー・マーケット・フェア」に,ついて報告させていただく。
このフェアには,日本から唯一,本県の企業である「株式会社カクイックス・ウイング社(以下「カクイックス社」)が出展したのである。
シルバー・ヘアー・マーケット・フェアって?
漢字で書くと,「銀髪市場展覧会」?
今年7月頃,鹿児島県香港事務所(以下「弊事務所」)に,香港特別行政区政府(以下「香港政府」)で高齢者福祉行政を担当している衛生福利及食物局から,連絡が入った。「シルバーヘアーマーケットフェアに鹿児島の企業が出展しませんか」。
ご存じの方も多いと思うが,香港は,大きなコンベンションホールを利用した大規模なフェアが数多く開催されている,いわゆる展覧会(フェア)天国である。しかし,最初「シルバーヘアー」と聞いて,私自身どのような内容のフェアかあまりピンと来なかった。聞けば,「高齢者向けの福祉機器・福祉商品や福祉サービス,衣類,食品などプロモーションの場として開催する」とのこと。要は,日本(鹿児島を含む)でもここ数年よく開催されるようになった「福祉フェア」である。
「シルバー・ヘアー」つまり「銀髪」を高齢者の象徴としたということ。なんとも香港人らしくしゃれたネーミングである。
鹿児島と香港の交流の成果
鹿児島県と香港は,香港が返還され,現在のように中国の一部地域(一応,特別行政区だが)になるずっと前の1980年から,「鹿児島・香港交流会議」を開催し,会議での決定事項に基づいて,スポーツ,音楽,青少年プログラムなど,さまざまな形での交流を継続してきている。今年も,10月に第15回目の同会議が鹿児島で開催され,今後2年間の交流に係る協議がなされたばかりである。
派手なオープニングセレモニーにびっくり。
交流会議は,2年に一度,開催地を交互に行われているが,2年前,香港で開催された第14回会議の際に,これまで同会議に参加していなったかお互い(鹿児島県と香港政府)の高齢者施策担当部署が初めて出席者に名を連ねることとなり,協議の結果,「今後は,高齢化の現状と課題,,対策など高齢者問題全般について広く情報交換を行う」とする合意がなされ,それまで交流のなかった高齢者担当部署同士の交流が始まったのである。
またその翌年(昨年)の10月には,香港で高齢者福祉施設を運営するポーレオンクック財団の担当職員一行(20名)が,本県長寿社会課(旧・高齢者対策課)のアレンジにより,鹿児島の高齢者福祉施設,ふれあいプラザなのはな館などで視察,研修を行ったところであった。
香港政府からの今回の出展のお誘いは,2年前の交流会議に参加し,また昨年の鹿児島視察に関わった職員が,「ぜひ鹿児島の企業にも参加してもらおう」と考え,実現したもので,まさに本県と香港の交流の歴史の積み上げがきっかけとなったものであった。
社団法人鹿児島県工業倶楽部が出展企業発掘
香港政府より話をいただいた弊事務所は,早速,本年度より設けられた観光交流局において,「かごしまPR課」と「観光課」と共に,広く海外に鹿児島をPRする役割を担うことになった国際交流課に連絡。
現在の同課課長は,皆様よくご存じのとおり,昨年度末まで本貿易協会の事務局をしていた橋口課長。経済団体等へのネットワークも広い同課長より,社団法人鹿児島県工業倶楽部の事務局へ話が持ち込まれ,同クラブの浜田事務局長が,出展企業を探してくださることになった。浜田事務局長は,同クラブの会員であり福祉部会にも所属されているカクイックスウイング社に出展を打診。同社は,「鹿児島と香港の交流がきっかけとなった話。香港での商品PRも兼ねて,架け橋の一翼を担おう」と参加を決定し,同社の西園靖彦 常務取締役と弊事務所において,出展に向けた準備を進めることとなった。
 香港マスコミの関心も高く。
香港の福祉ビジネスは
日本は,さまざまな書類やニュースなどの枕言葉として,「高齢化,少子化の進展に伴い,」というセンテンスが,使われるようになって久しいが,それでは,香港の高齢化率,福祉ビジネスの状況はどのようなものなのか。
調べてみると,高齢化率(65歳以上人口の全体人口に占める割合)は,ここ5年間ほど,11〜12%で推移し,微増傾向だが,日本に比べるとそれほど高くない。
しかし,これは最近いただいた情報で知ったのだが,香港は,(密かに?)長寿の国だった。日本人女性の平均寿命が世界で一番であることは周知のとおりだが,実は2番目は香港女性,そして香港男性は世界で一番である。
今の香港は人口密度が高いし,大気汚染はひどいし,子供たちは学歴社会に対応するため勉強に忙しく,運動をする機会がなさそうだし,と,今の香港に住んでいると,あまり香港が健康的なイメージがないので,私も少しびっくりした。
福祉ビジネスの状況であるが,香港政府の担当部署に確認したところ,「これから間違いなく高齢化率が上昇するであろう香港は,今後福祉ビジネスがどんどん大きくなっていく可能性が高い。その割には,他のビジネスに比し,福祉ビジネス主体はまだそれほど多くない。だから今回,初めてこのようなフェアを企画したのである」とのことであった。
政府の力のいれようがわかるフェアの運営
出展者として来港されることとなったカクイックスウイング社の西園常務が開催日前日の17日に到着されることとなっていたため,同日,私はアシスタントと2人で,フェア会場へ準備のため足を運んだ。ブース数は,当初香港政府より聞いていた約25という数より少ない19。会場も思っていたより小さく,「第一回目ということもあり,香港政府もそれほど大きなイベントとしてやるつもりはなく,また来場者数もそれほど多くならないのかもしれない」と思った。
そしていよいよ初日18日。西園常務と共に,ブースの最終調整を終わらせ,日本から唯一の参加,また海外からの出展組2社のうちの一社,ということもあり,オープニングセレモニーに招待を受けていた我々は,10:00から開始された同セレモニーに参加した。
驚いたのは,テレビタレント2名による司会,高齢者によるパフォーマンス,香港政府担当部署 高級幹部によるあいさつなど,非常に盛大に式が執り行われ,また多くの地元マスコミが駆けつけていたことだった。
私はここで,第一回目だから地味にやるのだろう,との私の昨日の考えが間違いだったことに気づかされた。
いよいよ展覧開始
開会式後,まずはマスコミを引き連れてVIPによるブース見学。カクイックスウイング社の西園常務に,VIPからの質問,マスコミのカメラのフラッシュが浴びせられた。
西園常務が,カメラのフラッシュを浴びながらVIPへ説明。
VIPによる見学が終わると,一般開放の前に,高齢者団体によるツアー客のみに開放。ここでも昨日の私の「来場者はそれほど期待できないかも」という考えが間違っていたことにすぐ気づかされた。見学ツアー団体は引きも切らず,会場内を埋め尽くしていき,それは一般開放となった午後2時以降も続いた。
特に,日本からの出展ということもあり,カクイックス社のブースは注目度も高く,出展されている商品について,興味深く,「これはなんだ」「使い方を教えてくれ」と説明を求めてくる。香港の方は,このような時,特に情報にどん欲で積極的である。西園常務,通訳者,通訳などを兼ねてサポートをさせていただいた弊事務所所員(私と,現地香港人スタッフ)の合計4人は,座る暇もないほどの対応に終われた。
また,弊事務所より,香港の日系マスコミ3社ほどに,今回のフェアについての資料提供を行っていたため,同3社は日本から唯一の参加となったカクイックス社のブースを取材(日刊である1社は,フェア終了後の翌20日の,同紙3面で大きく記事を掲載)した。
また日系マスコミだけでなく,地元マスコミ(テレビ,雑誌 等)からも「取材に応じてくれ」「カメラでとらせてくれ」という要望が5社ほどからあり,西園常務は対応に終われることとなった。
出展製品
カクイックス社による出展製品は,骨伝導補聴器やケアシューズ,食事用自助具,入浴補助用具,介護予防グッズなど,多岐他種類に渡り,他の出展者の中でも,その種類の多さはひときわ群を抜いていた。
西園常務の話によれば,足に優しくまた軽量である「ケアシューズ」は国内でもかなりの売れ筋であるとのことであったが,たしかに今回の出展品中でも,よく手にとってみられていた商品の一つとなった。

香港マスコミも,カクイックス社ブースをじっくり取材。
商談,および敵情視察?
展覧開始当初のツアー団体の高齢者客の来場をみながら,私は「多少なりとも,ビジネスにつながる(商談を持ちかける)来場者がきてくれればいいが」と少し心配をしていたがこれも余計な心配だった。
18日午後2時から19日午後6時までの一般開放時間中,あきらかに,他の来場者と違い,熱心に商品の説明を求め,名刺を差し出すいわゆる「ビジネス客」がかなりブースを訪れ,2日間をとおして,正確な数字は把握出来なかったが西園常務が「予想外」という感想を持たれるほどであった。
地元からの出展者の中に,香港でかなりの店舗を有する有名な靴会社があった。この会社は,健康シューズを出展していたが,カクイックス社のブースは数回訪れ,西園常務にいろんな質問をし,さらにカクイックス社のケアシューズの写真を一つ一つとるなどし,最終的には,「この商品を●つ,この商品を●つ,送ってくれ。」という話になり,西園常務が鹿児島に戻られてから,今後,取引交渉が行われることとなった。
思いがけない収穫
今回のフェアの出展数は,合計19。うち海外からは2社。カクイックス社以外の1社は,スウエーデンの「スウエーデン福祉研究所」であった。同社は,スウェーデン政府の支援のもと、スウェーデン障害研究所とスウェーデン大使館商務部が協力して設立された福祉ビジネスのコンサルティング会社とのことで,歩行補助機器などを出展していた(当初香港政府からは,私企業ではない,との報告を受けていたが,実際の出展者からいただいた名刺には「CEO(再最高経営責任者)」と書かれていたので,日本で言うところの第3セクターのようなものだろう)。話を聞いたところ,鹿児島と同様,以前より香港政府と交流を続けており,過去に福祉先進地として香港関係者がスウエーデンを訪れたことなどもあり,今回のフェアの出展に関して,香港政府より声がかったとのことであった。出展に至る経緯も,本県と非常に類似していた。
スウエーデンより2人来港されたうち1人の方は,身長が2メートルはあるのではないかと思われる二枚目男性であったが,なんと日本語がペラペラで,聞けば,西園常務がご卒業された東京有名私立大学に留学した経験をお持ちでしかも奥様は日本人,年に2,3回は仕事や帰省で日本を訪れているとのことであった。
共に招待を受けた,フェア終了後の打ち上げ夕食会では,西園常務と,福祉ビジネスに関する議論や情報交換で盛り上っていた。
常務「スウエーデンの状況を勉強にいこうかな」,先方「ぜひおこしください」というようなやりとりもなされ,今後,スウエーデンと鹿児島の福祉ビジネスにおける交流の可能性もあるかもしれない。
ビジネスを支援する県庁の部署にいる頃,多くの経営者の方が,「とにかくフットワークを軽くして,多くの現場に足を運ぶことが大事。そこで思いがけない出会いや情報が待っている」ということを言われていたが,カクイックス社も,また西園常務もこのような思いを持たれていたから,出展されたのだろうし,またこうして,思いがけない交流,,情報交換の機会を得,その思いをまた強くされたのではないだろうか。
なお,同社は,日本企業等へ向けた日本語のウエブサイトをもっているとのことである。ご興味がある方は,ぜひ一度,ご覧いただきたい。
http://www.swedishcareinstitute.com
最後に
私も招待を受けた打ち上げ夕食会の際に,今回の鹿児島企業の出展のきっかけを作っていただいた担当者に,感謝の意を伝えると共に,「今回のすばらしいフェアのことについては,鹿児島の企業の皆様にもしっかり報告したい。ぜひともこのフェアは,今後も続けてほしいし,ぜひ来年度以降も,鹿児島に声をかけてほしい」との気持ちを伝えた。
この担当者は,「今回のフェアは香港政府としても予想以上の成功だった(香港政府の正式発表の来場者数は2日間合計で「3000人以上」)。今の香港においては,福祉ビジネスのシェアはどんどん拡大していくと考えるので,サポートしていきたいし,勿論,このフェアは来年度以降も継続していきたいと考えている」とのことだった。
カクイックス社の西園常務も,「鹿児島と香港の長い交流があってこその話と聞き,少しでもその交流継続のお手伝いができればと考えての出展であったが,商品に関して予想以上の反応があり,香港における今後の福祉ビジネスの可能性を感じた」との感想を言われていた。
今回のフェアには,トヨタ自動車の現地法人が福祉車の出展をしていたものの,日本企業による出展はカクイックス社のみである。
これは,鹿児島と香港の長い交流の歴史,「鹿児島の企業を呼ぼう」と考えた香港政府の担当者,またその誘いに応えたカクイックス社,社団法人鹿児島県工業倶楽部のご協力などにより,実現したものである。
弊事務所も,このフェアに少しでも関わらせていただけたことを強く誇りに思うし,今後も,今回のように香港等で開催されるフェアに出展したいという県内企業様が出てくることを願う。
 出展されたトヨタの福祉車 |