◆日本産の先陣を切り、鹿児島和牛が香港で販売開始
◆6月末から香港〜鹿児島間を30本以上のチャーター便が就航 貿易ニュース鹿児島 2007.6月号去る4月27日,日本産牛肉の香港への輸出が解禁された。日本でBSE(牛海面状脳症)が発生したことを契機とし,2001年9月から始まった「日本産牛肉の輸入停止措置」を香港特別行政区政府が解除,日本国政府は,2004年6月以降,BSE対策に関する情報を香港政府に提供するなどして,根気強くその輸出解禁を要請してきたわけだが,ほぼ3年の努力が実り,約5年半ぶりに,香港で日本産牛肉の販売が再開されることとなった。
今回の輸出再開に当たっては,香港政府から提示された肉処理施設に関する条件をクリアし,日本国政府より認可を受けた2つの処理施設が共に,本県企業の施設ということとなり,本県の牛肉業界にとっては,最高の条件下でのスタートとなった。
この6月末より香港〜鹿児島間の空が騒がしくなる。両者間を9月始めまでの間に,30本以上のチャーター便の就航が予定されており,過去 海外から鹿児島への観光客数でNO1の地位にあったこともある香港から,再び,大勢の香港人の方が,鹿児島を訪問されることとなる。
今回のレポートでは,これらの香港と鹿児島間における久しぶりのビッグニュース2つについて,詳細を報告させていただく。
日本産牛肉が5年振りの輸出解禁
香港政府による牛肉輸入停止措置は,2001年9月の日本産への措置以降,同じく,BSE発生を契機とし,アメリカ産,カナダ産,中国遼寧省産なども同様の措置が行われていた。
しかし,そのいずれもすでに解除されており,措置が継続されていたのは,日本産だけとなっていた。 輸入停止措置がとられる前の2000年当時,香港には,日本産牛肉約60トンが輸出され,日本から見て香港は最大の輸出先となっていた(香港からみれば,牛肉輸入国中,第13位。)わけだから,今回の解禁は,日本の牛肉関係者にとって本当に喜ばしいことといっていいだろう。
在香港日本国総領事館が公表している情報によれば,今回の輸入再開に当たり,香港政府は,香港へ輸出する牛肉に対して,以下のような条件を出したという。
@特定危険部位(脳,脊髄など)の衛生的な除去
A30ヶ月齢未満の牛
B骨なしの肉
CHACCP(ハサップ)導入施設での処理
日本産牛肉が5年半振りに販売再開。
初陣は鹿児島産黒毛和牛。
※HACCP(ハサップ)とは
Hazard Analysis Critical Control Point Systemの略で,1960年代の米国アポロ計画で、宇宙食の安全性を高度に保証するシステムとして考案された製造過程管理手法。日本では、平成7年に食品衛生法が改正され、HACCPを基礎とした管理手法が、総合衛生管理製造過程承認制度として初めて法律(食品衛生法第7条の3)で位置付けられた。
認定処理施設 第一号は鹿児島から
そして,Cに代表される,輸出する肉を処理する施設に対する香港政府の条件を満たし,日本国・厚生労働省から認定を受けたのが,本県に所在する2つの食肉処理施設であった。
私は,第一号認定となった詳細な経緯を存じ上げないが,「おいしいは言うに及ばず,安心・安全な牛肉を鹿児島から全国・世界へお届けしよう」という関係者の皆様の日頃のたゆまぬご努力・誠実なご対応が,第一号認定につながったのではないだろうかと推察する。
なんと言っても,5年半ぶりの解禁を受け,しばらくの間(次の認定施設が出るまで)は,「鹿児島の2施設で処理した牛肉でなければ,香港へは輸出できません。」という状況になったわけであるから,これは,鹿児島の牛肉業界としては,先行者メリットをいかせる最高の条件が整ったわけである。
香港でも根強い和牛人気
みなさんがよくご存じのように,本県は和牛の生産量 全国第一位を誇り,関係者の皆様のご努力もあり,その知名度・ブランド力も国内的には,どんどん高まってきているといっていいのではないだろうか。
他方,香港でも,和牛人気は根強いというのがもっぱらの評判であり,独立行政法人日本貿易振興機構のレポートによれば,「富裕層やビジネス客を中心に,日本産高級牛肉に対する人気が高いため,今回の解禁により,今後の輸入拡大を期待する声も聞かれる」とのことである。
鹿児島牛が,鹿児島を出発。そして香港で販売開始
既に鹿児島地元紙等で報道されたとおり,5月14日には,本県曽於市で,農林水産大臣(当時)や,地元選出の国会議員,本県副知事も出席し,出荷式が開催され,高級黒毛和牛が鹿児島を出発。そして,その週末にはもう,香港の日系スーパーなどでの販売が始まった。
香港で発行部数第2位を誇るといわれているアップルデイリー紙【1995年創刊 社会面を中心とした総合日刊紙。1日あたりの発行部数約31万部(香港の域内人口は約700万人)】は,5月23日付け当紙で,「5年振りに 和牛の販売開始」という趣旨の見出しをつけ,日本の和牛がどのような飼料を食べて育てられているのか,などそのおいしさの秘訣と併せて,「日本鹿児島和牛一覧」という表を掲載し,鹿児島産和牛が食べられるレストランやスーパーマーケットの一覧表(値段を含む)などを掲載した。 ひいき目なしで見ても,「日本産牛肉が解禁になった→最初に売り出されたのが鹿児島産牛肉→やっぱり鹿児島の牛肉は味,品質などがいいのだろう」と考える香港人もきっと,多いのではないかと思われ,これこそ,将に先行者メリットというか,牛肉の販売促進はもとより,鹿児島産牛肉が,鹿児島全体をPRしていることになっている。
鹿児島産黒毛和牛 約16500円
スーパーマーケットを調査
早速,5月23日,一覧表に掲載されていた2つのスーパーマーケットに取材に行ってみた。
一つのスーパーマーケットは,今年1月に鹿児島物産展を開催し,本誌2月号でその模様を報告させていただいた香港・日系スーパーマーケットの代表格「シティースーパー」。そして,もう一つは,私も初めて訪れたのだが,香港の中心街から離れ,地元の香港人の住宅街といわれている町にある「Chill Club」。
両者とも,値段は,100g 3000円〜4000円と,やはり高級牛としてうまさに違わぬ価格での販売となっている。隣に並ぶアメリカ産やオーストラリア産,カナダ産と比較しても,その価格差は,約3〜6倍である。しかし,ここでも,表示には,両者ともに,「鹿児島産」の表示がなされており,「日本」というより,「鹿児島」の牛であることが,強く押し出されて販売されており,すでにある程度知名度のある鹿児島黒豚と相まって,「鹿児島の肉が,日本産肉のエリート」であることを,香港人に認識いただけるのではないかと感じた。
既に,香港でもかなりの知名度があるかごしま黒豚とのタッグで,香港で「鹿児島の肉」を売り込むいいチャンス。
総領事館もPRに一役
在香港日本国総領事館は,今回の牛肉輸出再開を受け,農林水産省と連携して,日本産牛肉のPRを中心とした,日本食の魅力,おいしさを紹介するイベントを計画しているという。招待者としては,香港政府や財界の要人はもとより,ホテルやレストラン関係者,量販店関係者,またマスコミ関係者なども予定されており,その数 300名。このイベントでも,招待客に,提供される牛肉は,「日本産牛肉」であることと共に「鹿児島産」であることが紹介される予定で,本県担当部署も,資料提供などで協力する方向で準備を進めている。
また,香港で組織されている香港かごしまクラブ(溝口鉄一郎会長)では,当該イベントに,すでに香港で販売されている鹿児島の芋焼酎などを提供し,一緒にPRしていただくことも計画している。
正直に申し上げると,日本産牛肉は・やはり高級牛として,それなりの価格で販売されるため,いわゆる一般庶民の口に入るような商品になるのは難しいと思われる。だが,香港は,折からの好景気を受け,富裕者層の所得は上昇傾向にあり,その層の購買傾向は,「安心安全でおいしいものには,金をおしまない」とも言われているため,日本産牛肉として,その第一陣を飾った鹿児島牛が,今後,より多くの香港人に食してもらい,「日本産牛肉なら鹿児島」といってもらえるようになるよう,経済界,県 等が協力して今後何をすべきか,このチャンスをどのように生かすかを考えないといけないだろう。
香港〜鹿児島間にチャーター便が就航
この夏,香港と鹿児島の間を,30本以上のチャーター便が往復することになる。
ご存じ,また実際利用されたことがある方も,いらっしゃると思うが,以前,香港と鹿児島の間には,直行定期便が就航しており,両者間の人と物の交流に,貢献していた。
その就航便がなくなってから早,約4年半。今では,香港在住の鹿児島県出身者の皆様が帰省される場合も,鹿児島と香港との間で実施されているスポーツや音楽などの交流事業で,香港の方に,鹿児島を訪問していただく場合も,東京や名古屋,福岡など,多大な費用,労力,時間を費やしていただかなければならない状況が続いている。
県人会の方からも,交流事業をとりまとめる香港政府の担当者からもよく聞かれるのは,「どこ経由が一番いいの?」というご質問であり,それぞれの経由地による移動の一長一短を説明するのだが,やはり香港駐在員としては,「直行便があったときは,こんな説明をする必要はなかったのだろうな」と思うところである。
定期便がなくなったことによる影響は,香港からの観光客数の動向が顕著に示す。1998年に香港から鹿児島を訪れた観光客数は,当時の外国人観光客中,トップである約54,000人。今,約38,000人でトップとなっている韓国は,当時,約5,300人で香港の10分の1以下である。しかし,香港からの観光客は,2002年9月をもっての直行便廃止により一気に減少し,その翌年からは台湾にも抜かれている状況である。
九州人気 復活なるか
そういった中での,今回のチャーター便の話。今回のチャーターのうち,そのほとんどが,香港の旅行エージェントで,日本送客数トップを誇るエバーグロスツアーズ社と,日本への定期路線開拓を目指す2つの航空会社:香港航空と香港エキスプレス航空の合意により,就航に至ったわけだが,さすがに,この3社が関係して香港から鹿児島へ就航されるチャーター便が29便と最初に聞いたときには,うれしいとか喜ぶとかいうより,「本当だろうか」という思いが先に立った。最近の,香港から鹿児島へのチャーター便の実績からみると,ちょっと考えられない数字であり,恥ずかしながら駐在員として,にわかには信じられなかったのである。
仕掛け人の一人であるエバーグロス・ツアーズ社のピーター袁 社長は,先日,鹿児島訪問された際に,地元紙の取材を受け,5月27日付け当紙で,今回の香港〜鹿児島へのチャーター便,及び九州ツアーへの思い,戦略を語っていらっしゃるが,私が同社長より,直接お聞きした話でも,「九州は,これまで路線に恵まれていなかったことによって,日本の中においては,行きたくても行けない場所となり,北海道や東北に遅れをとっていたが,観光地としての魅力が他と比較して劣っているわけでは決してない。ツアーの内容や値段によっては,九州にいってみたいという香港市民のニーズが,ある程度,高まってきていると判断して,今回のチャーター及び九州ツアーの販売に踏み切った」とのことであった。
6月末より,香港航空の飛行機が,香港から鹿児島へ飛び立つ
地道な努力が知名度を育てる
また袁社長は,あわせて「鹿児島は,以前直行便があり,また物産展などを香港で積極的に開催していたこともあり,その知名度が高く,鹿児島直航のツアーであることは,販売する上でのインセンティブとなる。これまで,鹿児島の関係者の皆様が積み上げてきたご努力で,今の香港での鹿児島の知名度があり,それを大事にしないといけない」とも言われた。
県は,業界の皆様や関係機関と連携し物産展を開催したり,香港の街中を走る路面電車トラムで鹿児島観光のPR車体広告をしたり,香港かごしまクラブの設立を促すなど,いわゆる香港と鹿児島との関係構築にいろいろな形で投資を行ってきたわけであるが,この投資が「香港における鹿児島の知名度」につながり,今回のチャーター就航に少しでも貢献したのであれば,結果的とはいえ,県として,また駐在員として非常にうれしいことである。
なお,今回のチャーターを受け,香港〜鹿児島間の定期便就航の可能性についても,一部報道などなされた。
専門外だが,国際線の定期便の確保というのは,その開設は勿論,その維持も非常に難しいと言われており,また他路線への影響なども考慮しないといけないと聞く。鹿児島側は今回の話に浮き足出す必要はないと思うが,本県が,いろいろな海外の地から,「魅力的な場所」として,今回のようなアプローチをされる場所であり続ける努力をつづけることは,対海外戦略の中において,いつまでも普遍の課題だろうと思う。