◆香港〜鹿児島 直行チャーターの仕掛け人が鹿児島で講演会を開催。 貿易ニュース鹿児島 2007.8月号今回の海外レポートでは,去る7月20日(金)に鹿児島で開催された 香港の旅行エージェント会社:エバーグロス・ツアーズ社のピーター・袁(えん)社長の講演会について報告させていただく。
前回のレポートで報告させていただいたとおり,同社の袁 社長は,今夏の香港〜鹿児島間チャーター便の仕掛け人であり,袁社長に寄れば,日本国内での講演会の開催は,最近では,大阪,北海道,沖縄に続いて4カ所目とのことである(香港では,香港日本人商工会議所 観光サービス部会での講演実績あり)。
エバーグロス・ツアーズ社の概要
まずは,エバーグロス・ツアーズ社の概要についてだが,同社は,1986年に,袁 社長が,添乗員仲間5名と設立した旅行エージェント会社である。今回の講演のために,同社からいただいた資料によると,設立から20年を経過した現在は,5名の従業員が日本人スタッフ5名を含む520名に,店舗数はマカオを含め8店に,売上高は,設立初年度の4.6億円が200億円にまで成長を続けている。
成長を裏付ける数字として,日本航空による日本への送客実績が10年連続第一位,同じく全日空が4年連続,キャセイパシフィック航空が7年連続第一となっており,香港からの日本向け送客においては,現時点で,他をよせつけない実績を誇る会社である。
(昨年度の香港から鹿児島への送客も,他をかなり引き離しての第一位)
このような実績により,現在,本県を含む日本の自治体や観光関係者らが香港を訪問し,観光プロモーションや営業活動をする際には,やはり同社及び袁 社長との面談が一番重要視される状況となっている。
なぜ,鹿児島で講演会?
前回のレポートでもお伝えしたが,今回の香港〜鹿児島間チャーターの仕掛け人は,この袁 社長である。通常は航空会社が就航を決定し,旅行エージェントに呼びかけ,エージェントがツアー商品を販売するというケースが比較的多いが,今回は,袁 社長が「足(フライト)の関係で,これまで中々いきたくてもいけなかった九州ツアーであったが,ここにきて消費者需要も高まり,勝算あり。香港での知名度が,九州の中では福岡を除き,抜きんでている鹿児島直行でチャーターを飛ばそう」と考え,香港の中堅航空会社「香港航空」と「香港エキスプレス航空」に話を持ちかけ実現したものである。
袁 社長は,6月28日のチャーター初便就航前の5月下旬,「今回のチャーター便就航にあたり,鹿児島の関係者の皆様にご挨拶申し上げたい」とのことで,忙しい合間をぬって1泊2日で鹿児島を訪問してくれた。その際は,同社とつきあいのある鹿児島のホテル関係者の皆様や県観光交流局職員,社団法人鹿児島県観光連盟の職員らと懇談いただき,久しぶりの鹿児島をみていただいた。
今回の講演の話は,その際に,袁社長より「鹿児島は,日本ツアーのガイドとして初めて降り立った思い出の地であり,これまで鹿児島の皆さんには,本当にお世話になってきた。今回のチャーター便と併せて,鹿児島のみなさんに少しでも恩返しをするために,講演会を開催させていただきたい」と申し入れいただいたものである。鹿児島側としては,本当にありがたい話であり,席にいた県観光交流局長が即答で,受け入れ意向を表明。今回の実現となった。
開催に当たって,袁 社長より提示された唯一の条件は「謝礼金なし」。曰く,「これはお金の問題ではない。私のこれまでのビジネス手法などが,鹿児島の観光関係者初めサービス業に従事する皆様の今後に少しでも役に立つのであれば,たいへんうれしいことである」とのことであった。
直行チャーター便を活用して鹿児島へ
今回の袁 社長の講演に併せて,県副知事との面談や,「今後,海外からのインバウンドにも力をいれていきたいので,ぜひ袁 社長にお時間をいただきたい」との話をいただいたホテル関係者の方との面談も組まれていたため,私もアテンド等のため,鹿児島に戻ることにした。
勿論,今回のこの鹿児島直行チャーター便を利用してである。
香港航空機にて,鹿児島へひとっ飛び
通常のチャーター便は,旅行社のツアー商品としての販売のみである場合が多いが,今回の当該チャーター便は本数が多いため,比較的若者が好むと言われている自由旅行用(航空チケットと,ホテルのみを予約)の商品と,日本人が帰省等で利用できるように,チケットのみの販売もされているのである。
年に1〜2回の鹿児島への帰国は,これまでは台湾を経由する香港〜福岡便を利用していた。同便のチケットの値段は,往復で約61,000円(1香港ドル 16円で計算)。利用されたご経験のある方はご存知だと思うが,本路線は香港の大手航空会社のみの就航のため,やはり割高といわざるを得ない。さらに,香港からの往路は,福岡国際空港への到着時間が,定刻午後9時ちかくになるため,すでに飛行機或いはJRを使って,その日のうちに鹿児島に戻る手段はなく,約6000円くらいかけてホテルでの1泊が必要となる。次の日,特急と新幹線を利用し,8900円也でようやく鹿児島に到着する。鹿児島からの復路はといえば,朝早く起きて,朝一便の福岡行きの飛行機に乗らなければならず,こちらも安くはない18,700円也。(値段はすべて,3月の帰国時のもの)
往復に係る交通費は,しめて約94,600円である。この帰省時の「足」の悩みというのは,私に限らず,香港に在住されている鹿児島ご出身の皆さん共通の悩みである。鹿児島〜香港間直行便があった当時を知る方も少なくなく,「あの時はよかったのに」といわれつつ,皆さん,東京経由や大阪経由,上海経由,ソウル経由など,お金と時間と体力を使って帰省されているのである。
他方で,今回の直行チャーター便による帰国。まずは料金であるが,チケットのみ販売のお値段,税込みで約52,000円(同)である。たったこれだけで,香港〜鹿児島間を往復できてしまう。
私は,今回のチャーター就航に当たり,袁 社長より,「チケットのみの販売もします」との連絡をいただいた後,香港及び華南の鹿児島県人会の皆様,或いは,香港の宮崎県,また熊本県両県人会の皆様にも,同チャーター情報をお届けさせていただいたのだが,やはり皆さんの反応は,「安い。休暇などの日程があえば,ぜひ利用したい。」というものが多かった。
残念ながら,片道チケットのみの販売がなかったため,鹿児島に戻ったあとに,国内のもう一つの帰省先に行かないといけない等,という方は,購入がしづらい状況であったが,会員の方の中には,「とにかく,時間の節約になるし,片道分捨てても安いので,購入したい。」という方もいたほどある。
鹿児島へ向けて出発
私が利用した日のチャーターは,香港航空の機材だった。新しい機材と聞いていたが,さすがにとても清潔感があり,気持ちがよい。
香港〜鹿児島の直行便を利用するのは,勿論初めての経験であり,香港と鹿児島の「本当の近さ」を実感できるということもあり,出発前はさすがにわくわくする。
いよいよ機体が動き出した。時刻は香港時間の10:04分。同20分に離陸後,同35分にピーナッツの配布,同55分飲み物配布,11:20分には早くもランチとなる機内食もだされた。以前,袁 社長が「機内食がちょっとさびしいんだよね」といわれていたとおり,いつも利用する大手航空会社のそれと比べると,若干 品数的に寂しい感じはあるが,それでも,味などは十分なレベルであり,個人的には問題ないなという印象をもった。キャビンアテンダントによる機内サービスも,高いレベルで行われているように感じられた。そして・・・
「鹿児島空港への着陸態勢に入りました」との機内アナウンスがあり,その15分後には,無事,鹿児島空港に到着。時間を確かめると,日本時間で1時57分。日本と香港の間には1時間の時差があるため,香港時間だと12:57分。つまり,10:04分に香港空港を機体が動き始めてから,しめて,2時間53分のフライトである。
なんとも,とにかく「早い」の一言。
初めての経験であったが,いつも,かなりの時間を費やして,帰国しているためか,「今さっきまで香港にいたのに」となんとも不思議な感覚である。これこそ,将に「香港と鹿児島の本当の近さなんだ」と感じた。
袁 社長が到着・県副知事との面談
20日,袁 社長は,別件出張中の沖縄から鹿児島入り。空港には,私を含む県関係者は勿論,ビジネスでの関係を超えて袁 社長のご友人となっている鹿児島の観光関係者数名が出迎えにみられていた。5月に来鹿された折には,お会いしていなかった方もいて,袁 社長も久しぶりの再会に本当にうれしそうであった。
関係者約10名が鹿児島空港で出迎え。
空港から市内へ移動し,市内ホテルにて昼食後,講演会までの間に,本県の市橋 保彦 副知事を訪問していただき,約20分ほどであったが,観光課長,交通政策課長も一緒に,面談していただいた。
副知事からの「もっともっと香港の人々に,鹿児島に来てもらえるようにするためには,どうすればよいか」との問いに,袁 社長は「鹿児島県は,長い間 香港で物産展を開催したり,トラム(香港式路面電車)で車体広告を行うなどされてきたため,香港での知名度は非常に高いものがある。今夏の鹿児島チャーターで販売状況がいいのも,鹿児島の知名度の高さの賜物。元々観光素材はいいものがあるので,今後もこの知名度の維持をしていただくと共に,新しいショッピングセンターなども完成すると聞いているので,その辺も情報をいただいて,うまく売り込んでいくようにしたい」と回答された。
袁 社長は,県へのお土産として,「鹿児島繁栄」と書かれた香港名物の花文字を持参してくださっており,副知事に贈呈いただいた。
ご存じ方も多いと思うが,この花文字は幸運を呼び込むとされており,袁 社長は,方角などどのような場所に張ったらよいかまで,レクチャーしてくださった。
市橋副知事と面談
いよいよ講演会 開催
副知事表敬のあと,いよいよ講演会会場となる鹿児島東急ホテルへ移動。袁 社長は,会場での下見・準備を念入りにされると共に,事前に「ぜひ時間をいただきたい」と主催者側に連絡があった来賓の訪問に丁寧に対応される。
そして,いよいよ開会時間となる午後3時。約100名の聴講者も集まり,其田 秀樹 本県観光プロデューサーによる開会の挨拶の後,いよいよ袁 社長の講演が始まった。
講演のタイトルは,「観光かごしまの期待するもの」とされたが,ご講演の内容は,エバーグロス・ツアーズ社,及び袁 社長が本当に得意とされている「観光ホスピタリティ」に関することが主題であった。
香港事務所に赴任後,また同社 及び 袁 社長とは,1年5ヶ月ほどのお付き合いであるが,袁 社長或いは,袁 社長が,社員に教え込んだホスピタリティが,同社をここまで大きく,しかも愛される会社にしたのでないかと,常日頃の言動を拝見していて,感じている。
袁 社長は,「よいサービスというのは,サービス業である以上,当たり前。お客様の立場にたって,お客様の想像を超えるようなサービスを行えるようになることが大事。」と言われた。実際,袁社長と関わった多くの方が,感じることだと思うが,実際これは社長の強いリーダーシップの下,同社で実践されており,私も含め,自治体関係者やビジネスパートナーである観光関係者 等の対応などをみていても,驚かされることが多い。だから,本当のお客様に対するサービスは,推して知るべしだろう。
講演中のエバーグロスツアーズ社 袁 社長
また,袁 社長は,「自分や会社の成長にとって一番の敵となるのは,誰でもない自分自身である」とも言われた。
僭越ながら,袁社長の特徴を2つあげなさないといわれると,上記した「みんなを驚かせるようなホスピタリティ」と,もう一つはその「謙虚さ」である。今や香港を代表する良好エージェントの大社長であるが,仕事を抜きにして,私たちと夜,一杯飲んだりするときの袁 社長は,全く「おごったり,えらぶったり」といったところがなく,「みなに気を遣い,皆を盛り上げるエンターテイナー」である。そして,これは,社員の方に対する対応を見ていても同様である。
私が訪問させていただいて,社内で一緒にいるときなども,社長自らが社員に挨拶をし,笑顔をふりまく。悩み事は,職場ではなかなか話しづらいであろうと,夜のハッピーアワー(欧風パブでビールなどが安くで飲める)に社員を連れ出すなど,同社の社員にとって,袁 社長は,常にすぐそばにいる身近な存在である。実際,このことは,同社の社員の離職率が香港の観光業界のそれを大きく下回っていることからも証明されている。
「鹿児島でなければ見れないもの,手にはいらないもの,味わえないもの。今後,そのようなものを作って行ければ,鹿児島の観光はもっともっと成長できるはず」とのアドバイスもいただたい。
そして,講演の最後の方で,「今のうち(の会社)の成長があるのは,とにかく『心,心,心』です。これからも,『人々の心に夢を届けたい』」と言われて講演をしめくられた。
ホスピタリティについては,其田秀樹観光プロデューサーも,鹿児島観光への十の提言の中の最初の項目で,「観光(サービス)は人。リピートするか否かはそこに住む人の魅力に尽きる。「他県に勝る観光資源」の甘い言葉に安寧していないか。一過性の観光地とならない為には鹿児島県人が持っているはずの豊かな包容力をもっと現場で活かす必要がある。」と,その重要性を説かれてる。
いいホテル,いい観光施設,おいしい食事,も勿論,重要である。ただやはり最後に行き着くところは,観光関係者にとどまらず,鹿児島へ訪問してくれた方々と接するすべての鹿児島県民一人一人の「ホスピタリティ」がどれだけ,県外,海外のお客様をひきつけるか,というところなのだと思う。
今回の,袁社長のご講演を聞いて,改めてその重要性を認識させられたところである。