鹿児島県産食品PRミッション開催さる
貿易ニュース鹿児島2007.5月号
 さる3月14日から17日にかけて,「鹿児島県産食品PRミッション」が実施された。
 当該事業は,地域発,地域のニーズに基づく輸出促進事業を支援するJETROのニッポンブランド支援事業を活用したもので,JETRO鹿児島,JETRO上海及び鹿児島県上海事務所の共催によるものである。
 当初,本事業は,上海でも有数の高級百貨店である久光百貨店において,水産物を目玉にした「鹿児島県産品フェア」として,昨年12月下旬に実施予定であった。しかしながら,本誌11月号で既報のとおり, 昨年9月に日本から輸入された化粧品のSK−Uから基準を超える規制物質が検出されたとして,輸入禁止になったのに端を発し,その後も冷凍サンマやイカ,カレイ,調味料などから基準を超える規制物質が検出され,次々に輸入禁止となる状況になってしまった。当該フェアの現地協力機関であり,中国で日本食材を扱うスーパー「しんせん館」を15店舗展開している上海石橋水産は,その時点で輸入を強行して,仮に規制物質が検出されたとすれば,その品については今後輸入することができなくなり,大きな影響を受けるので,水産物をはじめ,加工食品,酒,焼酎等を含む一切の日本製食品の輸入を当分見合わせるという判断であった。その結果,フェアで販売できる商品は日本から新たに輸入することはできず,既に中国国内で流通し,在庫が確保できる商品に限定されることから,商品ラインアップが不十分として,苦渋の決断で,フェアの開催は中止した次第である。
 しかしながら,安部首相の就任以降の日中間の関係改善を受け,日本製食品の輸入は徐々に再開されつつある。最後まで慎重であった上海石橋水産も近々再開したいとの意向であった。昨年4月以降,フェア実施に向けて,関係者が水産物を中国に輸出するための衛生証明の取得等の輸入諸手続,試験成績証明書を発行するための検査料金や海上運賃等のコスト,上海までの輸送日数やコールドチェーン等輸送ロジスティクスなどについて,情報収集と研究を重ねてきた。輸出再開の機運が高まり,これまで研究したノウハウを活用するために,フェアの代替事業として標記ミッションを計画した次第である。
 本来であれば,フェアという形で一般市民にアピールするのが効果的であると思うが,年度末が迫った時点では時間的な余裕もないし,百貨店のスペースも確保できない。しかし,普通の商談会ではつまらない。そこで,今回水産物がメインであることをふまえ,寿司及び天ぷらの試食会兼商談会及び市場調査というスタイルにしたのである。
以下,ミッションの概要を報告する。

1 事前準備
 年明けの1月から,JETRO内において代替事業の検討を始めた。関係機関との調整を経て,上海での実施が決まったのは2月中旬である。その後,会場や意見交換先,視察先との調整を慌ただしく行った。
 2月末には,鹿児島県内企業への募集案内を行い,また,上海にすでに代理店等を有する酒造会社にも声掛けし,水産関係2社,加工食品5社(うち2社は現地代理店),酒造会社6社(現地駐在員及び現地代理店)の参加が決まった。

2 3月14日(水)
 鹿児島空港より,上海浦東空港へ出発。鹿児島からの一行はJETRO鹿児島の職員2名を含む9名である。上海で小職,鹿児島銀行研修生及び酒造会社駐在員が合流し,計13名で一連のミッションが開始された。
(1) ジェトロ上海センター表敬訪問およびブリーフィング
まずはじめに,JETRO上海センターを訪問し,藪内所長及び農水産品輸出担当の市場開拓2部の久染部長からブリーフィングを受けた。上海は人口1700万人とはいえ,貧富の格差が激しく,日本食品のターゲットとなるのは,富裕層である5%程度に日本人,台湾人,韓国人,欧米人などを加えた最大でも200万人程度の市場規模でしかないこと,そこを日本の各自治体や世界各国がねらっており,非常に競争の激しいマーケットであることなどが説明された。

(2) 寿司店「寿司王」での意見交換
 「寿司王」は,今回のミッションの協力企業である上海石橋水産が経営する寿司屋である。上海にもいくつかの寿司屋があるが,ほとんどが日本人向けである。その中で,3月にオープンしたばかりの同店は,中国人をターゲットに置いており,店の内装やメニュー,盛り付けなども中国人を意識した派手なつくりである。今回のミッションは水産物の売り込みがメインであり,まさにこのようなところで扱ってもらえれば願ったりかなったりである。オーナーの石橋氏から,仕入れの状況や客層,今後の展開等について話を聞くことができ,非常に参考になった。また,石橋氏も鹿児島県産水産品の扱いに強い関心を示した。

3 3月15日(木)
(1) 試食会兼商談会
 いよいよ今回のメインである試食会兼商談会である。会場は,日系の花園飯店(ガーデンホテルオークラ)。市中心部に位置する5つ星のホテルで,他県が実施するフェアでもよく利用されている。事前の出品情報を基に貿易商社,食品卸業者,日本料理専業委員会に属する比較的高級な日本料理店等約160社に案内したところ,当日は41社58名が来場した。
 出品したのは,水産物がカツオ,トビウオ,キンメダイ,メダイ,養殖ブリ,マアジ,サバ,キビナゴなど。加工食品がサツマイモを使用したプリン,漬け物,お茶,天ぷら粉,揚げ玉,菓子類等,それに焼酎である。
 メインの水産物については,ブースでの商品展示に加え,職人の派遣を依頼し,寿司と天ぷらという形で提供した。その他は刺身やカツオのたたきである。カツオのたたきの評価が高く,その場で発注の申入れがあったようである。また,試食会用に準備したネタは完食であった。
他の商品についても,試食・試飲は概ね盛況であった。しかしながら,商談となると,価格や当地での需要見込みなどから厳しい面があったようである。焼酎については,ほとんどがすでに流通している品であり,新たな代理店・取扱店を見つけるというよりは,飲食店主等との意見交換という場になっていたようであった。


(2) 高級寿司割烹「利休」での意見交換
 上海における高級料理店の営業方針や水産物の仕入れ状況等についての情報収集と意見交換を行った。同店は,以前東町のブリを扱ったこともある。現在は大連からの仕入れが多いとのことであった。現在の上海の日本食店は,高級店と大衆店に二極化しており,大衆店が圧倒的に多いこと,大衆店は100〜200元の食べ放題のみ放題のコース設定がほとんであり,このようなところでは高価な日本からの輸入食材は価格的に扱えないこと,高級店だけの利用だけでは,漬け物やお茶については,ロットがまとまらないので難しい等の説明がなされた。

4 3月16日(金)
 3班に分かれ,上海石橋水産の加工場,上海花美食品の菓子工房,日系の物流・卸会社である上海良菱を訪問し,それぞれ意見交換した。
上海良菱では,同社の扱う商品や納入先,販売戦略等について説明を受けた。現地工場で生産される日本食品に加え,日本からの輸入食品を日系だけではなく,中国系のスーパーや飲食店にも卸しており,せまい日本人社会だけではなく,巨大な中国人マーケットを相手に業務を行っている。中国では,自治体が様々なフェアや商談会を開催しているが,はっきり言って中国人に売れそうな商品というのはほとんどなく,日本人だけではパイが限られるという厳しい意見もあった。
なお,焼酎やお茶については,硬水と軟水では味が異なるので,中国の硬水では本来の味が出ないほか,カルシウムと反応して固形物が発生する場合もあり,販売する際には軟水で飲んでもらえるような取組が必要とのアドバイスがあった。

(2) 福島ギャラリーでの意見交換
 中国市場において福島県産品の販路開拓を図るための拠点として,福島県が2006年10月30日に開設した施設を訪問し,意見交換を行った。福島県産品の常設のショールームとして食品や工芸品の展示を行うほか,販路開拓専門員が常駐し,現地の代理店や小売店,ホテルや飲食店などと商談を行うことにより,県産品の販路開拓を図っている。しかしながら,水産物がまだ輸入できていないため展示できないこと,出品意欲のある業者の商品は可能な限り展示しているため,必ずしも中国市場に受け入れられる商品のみをセレクトして展示できるわけではないので,県としては費用対効果の問題に苦慮しているとのことなどの説明がなされた

         【福島ギャラリー】

(3) Idフードセンター
 上海で,輸入食材を中心とした品揃えのスーパー5店舗を展開するシティショップ系列の輸入食品展示場で,2007年2月に仮オープンした施設を訪問し,意見交換を行った。中国市場への流通を目指す世界中の食品を集めて常設展示しており,現在の展示品目は,ワイン,ジュース等の飲料,調味料,麺類,菓子類等1000アイテムでヨーロッパのものが多い。日本のものはごく少数で,日本コーナーを開設したいとの意欲を示していた。同センターでは,年間5,000名ほどの業界バイヤーの来場を予定しており,彼らに対して展示商品の説明を代行するほか,各種手続き等貿易に関する実務も担当する。併せて,バイヤーの反応や引き合いについては定期的に出品者にフィードバックするなどの説明がなされた。

        【Idフードセンター】

(4) 日系中華レストラン「味道林」
 愛知県のみりん製造企業が経営するみりんでの味付けにこだわった中華レストラン。日本人の利用も多く,上海では数少ない焼酎を提供している中華レストランである。しかしながら,メニューに記載されていないため,知っている人しか注文できない。せっかく扱ってもらっているのだから,積極的な働きかけが必要と強く感じた。
(このような状況は,他の中華レストランでも見受けられる。)

(5) その他
 合間で日本食材を取り扱う下記のスーパー等を視察し,販売されている商品,価格等を調査した。
   久光百貨,美濃屋,新鮮組合,しんせん館,長崎鮮魚市場,シティショップ

5 最後に
上海で出回っている日本産水産物は,長崎県や北海道のものがあるが,まだまだごくわずかである。両道県産に決して勝るとも劣らない鹿児島県産の安心・安全な水産物をPRできたことは,非常に有益であった。近い将来,鹿児島県産の魚が上海市場に出回ることを思うと,鹿児島県人としてうれしく思うし,一消費者としても非常に楽しみである。
 今回のミッションでは,参加者それぞれの思惑があり,成功と感じる人,失敗だったと感じる人,それぞれあったようであるが,やはり市場を見てみないことには,何も始まらないというのが,共通の認識である。現地の状況を自らの目で確認し,じかに話を聞けたことは,非常に有意義であったといえよう。
 上海で継続して流通している鹿児島県産の食品は,今のところ焼酎のみであり,それも日本人向けがほとんどである。今回のミッションにより,魚がそれに次ぐ,またはそれを超えるポジションになる可能性を秘めていることが認識できた。まだまだ,課題は多いが,これで,今後は,単品ではなく,複合的に鹿児島の食文化を提案していけるようになり,鹿児島の知名度アップにも取り組みやすくなったように感じる。