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その16

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その16

弓場秋信氏今月号は何を書こうかと迷っている時に「為替リスクを輸入専業業者はどの様にすれば回避出来るか」とのお尋ねがありましたので、このテーマで筆を進めます。

貿易業を創業して22年、その間の為替を見ると円高の流れであった。1ドル260円が79円迄動き、約3.3倍も円が強くなった。輸入する側から見ると、1個100円の商品を33円で買える様になった事になり、市場売価が下がってきたのでその全てが利益では無いにしても、輸入業者の差益は相当の額に上ったのでは。一方同時期、輸出専業業者は1個100円の商品を33円で輸出する事に成るので、大きな痛手を受け、中には貿易業界から消えざるを得ない企業も出た。輸出入を同時に手がけた企業は円高差益とは無縁で、如何にリスクを回避するかで緊張の連続であったと思われる。私自身は輸出専業でスタートして手痛い打撃を受け、そして輸入を始める事により輸出入のバランスを取り生き延びてきた。
輸入専業者にとって為替リスク回避は非常に簡単である。それは輸入商談時の為替相場を基に原価計算がされたわけだから、商談成立と共に為替予約を銀行に入れる事で、その期間内に起こるかも知れない相場の変動リスクから開放される。しかし問題は人間の心理であり予約したことによる結果である。為替相場が動くことでの差損はいやだけど、運(偶然)が味方した時の差益体験(円高による利益)はなかなか頭から消えない。勝負事でも頭の片隅にある残像は勝利の興奮であり、負けても次は再び美酒をと挑戦したくなる。為替を予約するという事は、予約期間内の差損は回避されるが差益は得られない。予約の結果が逆に振れた時、即ちさらに円高に動くと予約しなければ利益がいくらあったと後悔し、場合によっては犯人探しが始まり社内に犠牲者を出すこともある。為替予約によって原価は既に決まり、初期の利益は確保されたはずなのに。
為替リスクの回避は前述の様に簡単である。それを実行するにあたり、リスクとは円安になる危険を回避する事であり、予約をした事が最善の選択であったと認識する事である。もし為替差益も得たいと思うのであれば、何もせず運を天に任せるのも一考である。
(貿易ニュース鹿児島2004.1月号掲載)

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