トップページ > コラム > 寄稿 > 中国,都市住民の生活は今

中国,都市住民の生活は今

中国,都市住民の生活は今

(財)日中経済協会上海事務所  所長 﨑岡 洋右

マイカーとマイホームはステータスシンボルと受け取られた時期が日本にもあった。
最近中国でもマイカー,マイホームに関心が高まっている。とは言っても中国全土いたる所とは言いがたく,あくまでも北京,上海を中心とした所得の高い地域に限られると思うのだが近頃新聞紙上で時々この種の記事を見られる。ここでは中国人の所得についてのいくつかの社会現象を参考までに見てみよう。

マイカーとマイホームの関係
ある調査によると,これはあくまでもある地域を対象にした調査なので,全国的なものかどうか解りかねるが,マイホームをすでに購入した人々がマイカーの購入についてどう考えているかとのアンケート調査の結果を見ると,すでに自家用車を持っている割合は17.7%,今は持っていないが今年中に買うと答えたものは10%,今は持っていないが将来買うとの答は 56.8%と最も高かった。また車は買わないという答えが15.5%であった。マイホームを買えるような人々はマイカーに対する関心も高いとの結果であった。          しかしながら中国ではまだマイホームを買える人口は極めて少ない。中国では一戸建住宅よりマンション形式の住宅が賃貸,分譲を含めて多い。分譲価格は地域によっては開きがあるが,上海では新築マンションは3LDK130m2当りだと17万元~40万元(700万円),最近は値上りしている。中国でも住宅購入の場合はローンが普通であるが,しかし新築のマンションを購入できる人々はごくわずかである。まだまだ住宅は高嶺の花なのだ。
自動車は一番安い車になると新車でも4万元(60万円)で買えるものが出てきている。上海ではサンタナMの新車は14~16万元ぐらいで買える。都市の住民はそれでも車より家を選ぶほうが多いと聞いている。しかし若者は家より車に関心が集まるという現象はどこの国も一緒である。

可処分所得は昇びたが収入格差も大きい
最近の都市部における収支状況を今年の第1四半期でみると,1ヶ月1人の総収入が平均で744元(約1万円強),このうち可処分所得は708元に達し,前年同期より16.1%も増加している。この744元は給与所得ではない。給与所得は527元で残りの217元に相当する収入は給与以外の収入である。中国人は給与所得では満足せず,常に給与以外の収入の道を求めている。特に技術や知的才能を持っている人間ほどその傾向が強い。従って意外と個人所得は実際と異なり高い人間もいる。都市部ではこのような傾向が多く見られる。しかし同じ都市部でも所得の高い層と低い層の格差は約8倍あり,ちょうど都市部と内陸部との収入格差に類似している。所得格差の傾向は今後も拡大していくものと思う。消費支出を見ると医療保険,交通,通信,衣服,娯楽,教育,文化,食品への支出増加がみられ都市部住民の支出は所得の高い層に支えられて,文化,娯楽,食品といった都市型現象の拡大が連がっている。上海等はその代表といえよう。衣,食,娯楽に関する消費は若者向けが目立ち始めていることはアジアのどこの都市にも共通したものとなっている。北京,上海でスターバックス(コーヒー店)が店舗数を増やしており,ファーストフード店が増加していることは所得の向上と,食文化までも変えていく時代の変化が中国といえども逆らえない現象なのかもしれない。

最低生活保障額,北京290元,上海280元
最近全国的に都市部では最低生活保障金が引き上げられている。都市部では物価水準が上昇し,生活必需品も高くなっており,住民の生活費も苦しくなってきている。このような状況はリストラされた人々には生活環境の悪化につながっている。そこで政府は各都市部での最低生活の保障金を上げる政策をとっている。これを見ると,1ヶ月の最低生活保障金の最高は深セン(広東省)の344元,アモイ(福建省)315元であり,最低は南昌(江西省)の143元となっている。北京は290元で,上海の場合は280元であるが,可処分所得は北京年間10,350元,上海は11,718元であるから,南昌の可処分所得が5,104元と比較すると上海人の方が恵まれていることがわかる。しかし,そう単純に言えるかどうか上海より江西省の南昌のほうが物価は安いと思われるから,生活内容では上海人の方が苦しいこともあり得えるだろう。それにしても今,北京でも上海でも一人の人間が1ヶ月280元~290元で生活できるものだろうか。上海ではとても生活はできないと言う。

コンビニエンスストアーは大人気
上海はコンビニの数が最も多く,コンビニが初めて登場したのは1993年であったが,上海人の所得向上と,とれに伴う購買力の増加。そして手軽く必需品が手に入って安く便利なことから爆発的な人気が出たからである。ローソンを始め,聯華,好徳,可的等大手のコンビニ店が1999年以降は急速に増えてきた。現在2~3日に1店の割合で店舗数が増加しているといわれているが,その数は1800店を超えたといわれている。上海は人口の割合から見て,コンビニの数は3000店が適当だと言われているが,この分でいくと3000店に達するのは真近かであろう。そこで北京はコンビニ市場としてまだ未開の段階(現在100店)と言われており,コンビニの商圏人口は3000~4000人とするある試算にもとずけば,北京は2000店まで増やせるという。
上海がコンビニ数では限界に近づきつつある状況を考えて,さらなる展開を北京を新しい戦場として各コンビニチェーンが選んだ。今後,熾烈な戦いが行われるだろう。

(財)日中経済協会上海事務所連絡先:
中華人民共和国上海市延安西路2201号 上海国際貿易中心大厦2001号
電話:86-21-62701647 FAX:86-21-62752211
(筆者は1994年7月~1997年7月までジェトロ鹿児島貿易情報センター所長として勤務)

TOP ▲