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弓場社長の貿易アドバイス

その15

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その15

弓場秋信氏貿易には様々なリスクが伴うが、相手国の事情で損害を受けたりビジネスチャンスを失うこともある。それは1企業の管理能力を超えおり、この種のリスクの予測はかなり難しいので、1カ国に取引を集中しないことが肝要である。そのような考え方から最近の中国一極集中への警笛として「中国プラスワン」という言葉が新聞や書物で取り上げられる様になった。それは昨年の中国におけるSARSの発生による混乱、中国元の安さ(20年前と比較すると1/8に切り下げられている)に対する世界各国の切り上げ圧力による中国元の切り上げ懸念のリスクヘッジとして、中国に取って代わる取引相手国を持つべき、との考え方である。
輸入相手国として中国の代わりを1カ国だけで補うことは、人口・面積・資源・人件費などを考えると困難と思われる。そこで分野別・商品群ごとに、品質・価格・ビジネスサービス面で中国と同等、或いは勝る国を探すことによりリスクを回避する、との考え方が賢明であり現実的である。以下に私の経験から東南アジア主要3ヶ国がどの分野で「プラスワン」に成り得るかを述べてみたい。

1.ベトナムの優位性は人的資源とメコンデルタの肥沃な土地と自然である。
勤勉で誇り高きベトナム人の人件費は中国より約30%安い。中国と同じ社会主義の国とは言え南ベトナムが社会主義経済に組み入れられたのは27年前の事で、市場経済を理解する素地があり、商習慣の違いによるトラブルも少ない。具体的には、軽工業品、農水産品が有望で、他の商材でも中国との違いは、少量の注文にも応じてくれる事である。 

2.インドネシアは歴史的発展段階から見ると、本来ならば現在中国と肩を並べているか、中国の先を行ってしかるべきであった。しかしながら政治の不安定、宗教や貧富の差から来る社会不安・混乱でASEANの巨像は留まったままである。それでも豊富な資源を活用した木製品、水産品、一部の農産物・鉱物資源は十分に競争力を持っている。また現地通貨ルピア安が魅力を発揮する瞬間が有る。

3.タイは殆ど全ての分野で中国製品に取って代われるので、保険を掛ける先としては最適国であるが、問題は価格が少し高い事である。それでも農水産加工品、工業製品、装飾品、木製品では一日の長を持っている。また国際商習慣や日本市場に精通しているので取引の中でのクレームが少ない。

先に述べたようにカントリーリスクを予測することは難しいが、常日頃より世界の動きに注意を払う事により、リスクを少しでも回避することは可能と考える。リスクの無いところにリターンは無い。
(貿易ニュース鹿児島2003.12月号掲載)

その14

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その14

弓場秋信氏私は地元企業より、海外進出(合弁・単独)についてアドバイスを求められたり、外国企業の買収(M&A)の仲介を依頼される事がある。そこで今回はそれらの事例を紹介します。

ある食品メーカーの幹部4人が中国に工場を建設したいのでアドバイスをして欲しいと事務所に見えた。既に中国とは取引が有り、取引先の工場で技術指導や検品の為に2-3ヶ月の滞在経験を持つ皆さんより今後の計画についての説明を受けた。私は、「この4人の中でどなたが責任者として赴任される予定ですか」と質問した。すると、「工場の予定地は田舎で、そこの生活環境がどの様なものかを知っているので私達は行きません」、「じゃ誰が行かれるのですか」、「それは決まっていません」。私はその答えを聞いて「中国に進出する前に人の養成が先では。現地を知るあなた方経営幹部が行かれるのであれば細かい相談に乗りますが」と。その後このメーカーは自前の工場建設計画を凍結し製品輸入のみを従来通り行なっている。
ある製造業の社長より、海外に製造現場を持ちたいが現地政府の許可や環境問題を考えると、ゼロからの立ち上げは大変なので現地企業を買収して欲しいとの要請があった。そこで事前調査後、社長と一緒に東南アジアの企業数社を訪問した。その中に社長のメガネにかなった工場を、数ヶ月の交渉を経て希望通りの条件で企業買収終え、社内での社長からの発表となった。その話を聞く社員の目は輝き、社長の顔は自信に溢れ眩しく見えた。その買収企業を立ち上げ、運営するためには技術者を含む最低3人が海外赴任しなければならない。人選を始めると意中の複数の人が、家庭の事情で日本を離れるわけに行かない旨の話をする。結局選考の結果は、消去法で家庭的に問題が無い技術者と単に語学力のある人が派遣された。その後の結果については読者の推察におまかせします。
海外進出は日本における営業所立ち上げや工場建設とは明らかに違う。生活環境、言葉、法律、習慣、価値観等が異なる中での事業は、距離的な問題もあり日々起こる事柄に対しての適切な判断が可能な経営感覚(能力)を備えた人材の派遣が望まれます。ややもすると語学を最も重要なファクターと考えがちだが私はそう思わない。それは日本における起業(創業)以上の覚悟と準備が必要で有ると考える。
(貿易ニュース鹿児島2003.11月号掲載)

その13

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その13

弓場秋信氏このコーナー(その3)で輸入商品の品質に対するチェックポイントを書いたが、今回は実際の取引及び商談例について述べます。
15年前地元のホテル関係者から綿タオルの輸入依頼があった。そこで綿花の生産国でもありタオルを含む綿工業が盛んなパキスタンからタオルを輸入しようと、パキスタン製造業名鑑(ダイレクトリー)を基に4社ほどピックアップ、そして輸入したいタオルの仕様書、必要数量を書いて、商品見本、価格を送付して頂く内容の手紙を出した。すると4社より見本と一緒に返事が届き価格と品質をチェックすると、うち3社は仕様に合致した見本が届いた。しかし3社の価格には当然の事ながら高低が有る。私は現地に行くことは経費の関係で無理が有るので3社の中で価格が一番高い業者に発注する事とした。それは品質面を考慮してのことである。しかしながら到着した貨物は見本と比べ品質の落ちる市場価値の無いものであり、安易に価格が高ければ高品質な商品が届くであろう、との考えが甘かった。その3社ともう少し電話やfaxでコミニケーションを取り判断すべきであった。
中国の華東交易会に参加した時、上海の製造業者のブースで魅力ある商品が目に入った。そこで早速見積書を貰って価格をチェックすると、十分過ぎるほど価格競争力があるので展示品の品質チェックをすると、車輪を回したときに少し音がする。この音がしないように出来ないかと尋ねると「日本人は如何してそんな細かい事を言うのか、その音が本来の商品の性能を損なっていますか」。この商品は消費者に直接販売するので、性能に直接関係ない部分でも日本の顧客の目は厳しいと説明しても理解してもらえなかった。またミャンマーでの商談では、二級品が発生するので一級品と併せて買って欲しいと言われた。日本では二級品の商品価値はゼロであり買えないと返事をすると怪訝な顔をする「一級品より安くするのになぜ買えないのか、品質の落ちるものは価格を少し安くするので買って欲しい」と。
上記2社とは結局取引をしなかった。それは品質に対する考え方に疑問を憶えたからである。見本は1個であり最も品質の良い物を見せているかも知れない。製造工程や原料のチェックは当然の事、経営者を含む製造責任者が品質に対してどの様な考え方を持ち、物づくりに携わっているかを知ることが重要であり、その取り組みの姿勢が最終製品の品質を左右するからである。
(貿易ニュース鹿児島2003.10月号掲載)

その12

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その12

弓場秋信氏国内での商談でも食事を伴うことがあるが、海外での商談は国内以上に食事を一緒にする機会が多い。それは相手がバイヤーで無く売り込みでも海外からの訪問客として持て成す。食事だけなら思考能力も落ちることなく会食中もビジネスの話が進められるが、酒が入るとそうも行かない。シンガポールを輸出商談で訪問した時の事である。
当時マレイシアに中古輸送機器の輸出を行なっていた。その輸入者がシンガポールの友人も欲しがっているのでコンタクトしてはと紹介してくれた。信用の置ける人であろうとは思ったが、一回も会ったことの無い人と取引をする訳だから当然のことながら代金決済条件はL/C(信用状)或いは注文と同時に前送金とした。相手はL/C決済でなく前送金方式を選んだ。それは輸入者が輸出者に対して不安を持たなければ、送金が銀行に支払うトータルの経費が安くて済むからである。
輸出代金の決済に最も広く使われるL/Cの発行は、輸入者にとっては銀行からの融資枠確保、銀行手数料の支払い、L/C決済までの金利の発生、為替変動リスクなどが生じる。もし輸出者の承諾が得られるならば、国内取引同様に商品受領後の支払いがベストである。もちろんその他の決済方法もあるので、輸入に当って品質・価格・納期で問題が無ければ支払方法の交渉となる。
一回目の輸出が終わり別件でのシンガポール訪問を機に、新バイヤーを訪れた。初対面であったが最初の注文に満足したと見え、商談もスムーズに進み二回目の受注となった。その後中華料理店に招かれ、美味しい料理に酒が加わり話も大いに盛り上がり幸せ気分に浸っていた時、相手から支払方法について提案があった。「前送金やL/Cでなく船積後の後送金にして貰えないだろうか?」ほろ酔い気分の中、面と向かって信用して欲しいと言われ了解してしまった。二回目注文の船積後、送金依頼をしてもなかなか入金がされず全額回収までは到らなかった。
商談の中で相手は様々な球を投げてくる。緩急織り交ぜての直球・各種変化球を繰り出し選球眼を観察しながら、自分にとって有利な配球の組み立てを考える。私への配球は、前送金(貴方を信用していますよ)→ 二回目の注文と歓待(感激)→ 後送金の提案(宴席・面前・日本人の性格)→ 支払い遅延。 私は術中にはまって三振である。通信による商談は考える時間が有るが、海外を訪問しての交渉事は、その瞬間が真剣勝負となるので、酒がはいった時は人間交流に留めた方が賢明なようだ。
(貿易ニュース鹿児島2003.9月号掲載)

その11

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その11

弓場秋信氏今回のワンポイントアドバイスは、直接貿易に関係ない話をします。とは言っても商談で訪問したある国での出来事です。

空港について入国管理官にパスポートを提示すると「千円、千円」と言い中々スタンプを押してくれない。ここで千円渡したら次の日本人も払わされると思い、私は知らない振りして待っていると相手が根負けして入国許可のスタンプを押した。入国後、商談先の島に向かうために再び飛行機に乗り、到着後ホテルに入ると警官が見えパスポートを持って警察署に来るようにとの事、理由を聞いても答えず従うしかない。警察署に着くと先ほど同じ飛行機でこの島に着いた外国人の姿が見える。理由が解らないまま部屋で待っていると別室に呼ばれ、来島の目的と誰に会いに来たかを尋ねられた。暫くすると警官が「あなたが会いに来た現地の人が先ほど見えたのでホテルに帰ってよい」との事。パスポートは、と問うと現地の人に渡すからホテルで待つようにと言われる。部屋に帰っても、外国では命より大事と言われるパスポートの行方が気になり落ち着かない。
そこに電話が鳴り受話器を取ると、この島に住んでいる日本人だと言う人が「あなたはパスポートを警察に取り上げられたでしょう、言葉もわからないだろうから私が変わりに取り返してあげよう。しかしそれにはお金が必要だ。貴方方は仕事でこの国を訪問したのにビジネスビザを持っていないのでお金で解決するしかない。普通は高いが私が200万円で交渉してあげよう」。何故彼がこの事を知っているのだろう、そして滞在先も。もしかして警察とぐるになっているのでは、と疑問を持ちながら「その必要はないです」と断り現地の人からの連絡を待った。3時間ほど待ったでしょうか、パスポートは警察から持ってきたので安心してとの電話が入った。私が「警察にいくら払ったのですか」と尋ねると彼は、「お金は払わなかった」と答えたが私がそんな筈は無い、そのお金は私が払いますので金額を言ってくださいと再度尋ねると2人分18万円でパスポートを返してもらったとの事。
正当な手続きを経て入国するも、観光ビザで商談しようとしたとの言いがかりで、袖の下を第三者経由で要求され支払うことになった。次回から面倒でも現地の警察に隙を見せない為にビジネスビザを取得した。そして日本の中でも一緒ですが、現地に住んでいる日本人全てが善人ではないということである。
(貿易ニュース鹿児島2003.8月号掲載)

その10

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その10

弓場秋信氏私のミャンマー(旧国名ビルマ)に対するイメージは、素顔の美しい国民、軍政を敷き民主化運動を弾圧する強面の政府、そして豊かな天然資源が眠る未知の魅力を持つ国である。
しかしそれは間接的な情報を元に出来上がったイメージで、自分の目で見て現状を把握したいとの思いでの初訪問であった。
首都ヤンゴンの郊外に位置し周囲を緑と湖に囲まれた宿泊先のホテルは、内部の設備、調度品もここがミャンマーかと思わせるほどの高級品で飾られていた。以前鹿児島に製材技術習得のために滞在していたソー君の案内で、ヤンゴン市内や工場そして郊外の村を訪ねた。庶民の生活は経済統計に表れる数字からの想像より裕福そうで、笑顔がすてきな人々であった。ソー君の話で興味を持つたのが、公務員の給与と為替の二重レートである。
警察官の月給は、平均的庶民の5日分の生活費相当である。後の不足分は警察官としての仕事をする中で稼ぐシステムとなっている。例えば、市民から泥棒が入ったとの連絡を受ければ、その現場に行くのに被害者から謝礼をもらい、捜査に当って謝礼をもらう言った具合である。役所に勤める職員も警察官と同じような給与で、役所に来た人に、必要書類を販売したり、用事を代行することで謝礼を頂く。これを俗に「袖の下」と呼ベるでしょうか。政府或いは国は、公務員に十分な給与を払えないので、公務員の地位と仕事を与えるので後は良しなにと言ったところでしょうか。
豊富な天然資源に恵まれながら外資の導入が進まない理由の一つに外国為替の二重レートがある。公定レートは、1USDが約6.4チャットで実勢レート(闇レート)は1USDが約900チャットと140倍の開きがある。例えば日本から1万ドル持つて行き銀行で両替すると6万4千チャットを貰うが、ミャンマー国内で使うときには、その価値は140分の1に激減するといった具合である。最近ではあまりにも格差があるのでその中間レートが存在しているようだ。
人口5000万、面積は日本の1.8倍そして豊富は資源を持つミャンマーは、今すぐのビジネスには不向きであるが近い将来、魅力あるパートナーとなるのでは。。。
(貿易ニュース鹿児島2003.7月号)

その9

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その9

弓場秋信氏中国・香港を中心とする新型肺炎(SARS)の流行とそれが取引に及ぼす影響を肌で感じている今日この頃である。海外との取引では、その国の日々の変化が見えないだけに予測できない事態に遭うことが多々あり、改めてリスク管理(ヘッジ)の重要性を感じる。
過去の取引の中で私が最も大きな影響を受けたのは、宗教間の対立による暴動・焼き討ち等で取引停止に追い込まれた冷凍鰹のインドネシアからの輸入である。鰹節用の原料として最も品質が高いと言われる一本釣りインドネシア産鰹を年間2000トン、アンボンより輸入していた。このメーカーにたどり着くまでに2社と取引した。最初の会社は品質面で劣り、2社目は国営企業で最初は順調に推移していたが後に資金面で行き詰まり供給が出来なくなった。そしてインドネシアで偶然話をした台湾人が紹介したアンボンの華僑系インドネシア人の工場が3社目である。アンボン島の中心地で建築資材の卸販売を正業としながら新たに鰹の冷凍加工工場を始めた矢先で、拙いインドネシア語での会話となったが真面目で仕事熱心な社長と馬が合い、信頼に足りると判断し取引が始まった。鹿児島のメーカーに同行を願い現地工場での技術指導もあり、品質・価格ともに満足し加工された製品の全てを引き取り数年して取扱量は年間2000トンまでに達した。工場では更なる生産増を目差し設備投資に着手した矢先に事件は起こった。
従来イスラム教徒とキリスト教徒が仲良く平和に暮らしていた島に、異教徒同士の反目を画策し、内乱状態に持って行こうとする政治的背景を持ったグループが島に入り、お互いの村の焼き討ち・暴動へと発展し、無政府状態がつづく中で冷凍工場も略奪・焼き討ちに遭い、実直で仕事熱心な社長も全ての資財を失い島外へと移住した。と同時に私も冷凍鰹ビジネス4億円分の売上を失った。それは全売上の40%に相当した。しかし会社の致命傷になることもなく今も事業を続けられているのは、常日頃よりリスクヘッジを念頭に置きながら供えをしていた事が大きかった。輸出入のバランス、取引相手国・地域の分散、取扱商品の多様化、財務体力の強化等である。
世界には多くの民族(部族)・宗教、富の不平等、政治腐敗、文化・習慣、価値観の多様化、環境問題などが存在し、それらが複雑に絡み時として形となって表面化する。不測の事態に対しての備えをしながら日常の仕事に励んで生きたい。
(貿易ニュース鹿児島2003.6月号掲載)

その8~インターネットの怖さ~

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その8~インターネットの怖さ~

弓場秋信氏通信技術の発達で外国との交信が迅速にそして安価になった。特に電子メールの普及は、大量の情報を瞬時に送れるようになり相手との意思の疎通に大いに寄与している。従来貿易の通信手段として多く使われていたテレックスがFaxに変わり、今は電子メールが主流となっている。しかしそんな電子メールたよりのビジネスには、思わぬ落とし穴が有るのではと思わせる出来事があった。
ある時機械工具の輸入をすべく、国とメーカーを選定して、必要とする商品の仕様並びに数量をFaxで数社に送った。その内の1社よりメールで写真の添付きで返事が届いた。それは正しくこちらで文章にして送った仕様に近いものであったので、早速細部にわたる交渉にはいった。先方はこちらからの要望を受け取ると、1日置かず納得のいく返事が返ってくるので、素晴らしい供給業者を見つけることが出来たと感激し見積りを依頼した。届いた見積りは日本の市場価格に精通している業者であると感じ入いるに充分な価格であった。しかし支払条件は前送金となっている。初めての取引でもあるのでL/C(信用状)による支払いをお願いしたが前送金を譲らない。
過去の経験からなのか本能的に何かを感じ、会社のレターヘッドを使用してのProforma Invoice(仮納品書)をFaxで送るようお願いした。レターヘッドの会社名は同じであるが住所・電話Fax番号が最初にこちらから送った会社のものと違うので、最初の電話番号に電話をすると、それまでメールでやり取りしていた人は既に会社を退職していた。また新しいところに電話をすると一般の家である。そこで今までの人に対する何かが不信へと変わった。改めて最初の会社に電話をすると引き合いのFaxは受け取っていないので送ってほしいとの事であった。そして今までより安い価格で見積りが届きビジネスが始まった。
電子メールでだけの取引は文字だけで心が見えない部分もある。顔の見えない外国人との取引に、相手を知る手がかりとなる電話での会話やFaxでの所在確認も大切である事を学んだ。
(貿易ニュース鹿児島2003.5月号掲載)

その7~年末ジャンボより儲かる話~

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その7~年末ジャンボより儲かる話~

弓場秋信氏年末ジャンボ宝くじは、前後賞合わせると3億円の賞金がもらえる。当らないだろうと思いつつも買い求め、発表までの期間3億円を何に使うかと考えている。
私には海外からジャンボ宝くじよりも多い金額のお金をあげる、との夢のような話が手紙・ファックスやメールで届く。この話は絶対に秘密にと相手から言われているが、経済状況が芳しくないので儲け話を会員の皆さんと共有したいと思い書くことにしました。要旨は以下の通りです。
『貴方は面識もない私からの手紙を受け取り、驚いておられることでしょう。貴方を信用があり秘密を守れる人であると商工会議所より紹介されました。私はナイジェリア政府の高官で、外国との合弁事業で得た利益2500万ドル(約30億円)を貴方の協力で貴国の銀行に送金しようと思っています。つきましてはこの送金が実行されたら貴方に25%(約7.5億円)今後一緒に事業を行なう資金として5%(約1.5億円)をプールし残り70%を私が指定する口座に送金してもらう、と考えていますので貴社のインボイスに取引銀行口座を書いて送ってください。』
手紙の中に出てくる固有名詞や内容は、新聞等で世界のニュースに目を留めていると道理にかなう話であった。空白のレターヘッド付きインボイス、海外送金の受入銀行名と口座名義・番号を教えるだけで7億5千万円がもらえる夢のような話である。また最近ではセネガルから宝くじ賞金の話が、あるいは南アフリカからはナイジェリアと同じようなメールが届く。この夢のような話を物に出来るのでしょうか。
ではこの申し出を受け、一攫千金を夢見て返事をした後の展開を推理しましょう。先方の要望に沿った書類がナイジェリアに届いたならば、日本に送金するために新規の口座をナイジェリアの銀行に設けなければならないので、外国人が口座を開設に必要な金額100万円(あるいはそれ以上の金額)を持ってナイジェリアに来てほしいと理路整然とその理由が書かれ、そして口座の開設が終了し次第貴方の口座に7.5億円送金します。そこで現地あるいは第3国に出かけ依頼者に現金を渡し、自分の口座に送金7.5億円が届くのを待っているが永遠に届かず、依頼者に接触を試みるが電話番号、アドレスは既に変更されている。詐欺だと思ったときには既に遅い。
世の中甘い話には裏があるようで、こつこつと地道に行くしかないようです。
(貿易ニュース鹿児島2003.3月号掲載)

その6

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その6

弓場秋信氏鹿児島が全国に誇れるもの、或いはその分野で全国1位の物は何があるか。調査の結果孟宗竹の竹林面積もそれに該当することがわかり、輸出すべく韓国のバイヤー探しを始めた。なぜ韓国かと言えば、過去の貿易統計を調べたところ韓国で実績が出ていたからである。そこで韓国のダイレクトリーで、竹を扱っている業者をピックアップして手紙での売り込みを行い、バイヤーを見つけることが出来た。それから何年も取り引きを行なっていたある時、取り消し不能のL/Cを受け取っていたにも拘らず韓国のバイヤーより孟宗竹の輸入が禁止されたとの連絡を受けた。理由は植物検疫上の問題との事。輸出すべく孟宗竹を北薩地区で切り出し鹿児島港の置き場に6000本を既に用意した後であった。植物防疫上の事であればバイヤーも成す術がなく、またバイヤーに損害賠償を要求する事も出来ず、仕入れ価格の半値での再販となった。
貿易は自由化に向かって非関税障壁の緩和・輸入関税率の切り下げが行なわれ、障害は少しづつ取り除かれている。しかしながら世界が狭く自由になったことで、様々な病原菌も国境を越えて容易に入り込めるようになった。また食品に含まれる添加物も多種なってきた。それらに対して各国も貿易管理を強化してきた。特に植物防疫・動物防疫の分野における規制が厳しくなった。最近の例で言えば、BSE(狂牛病)発生による影響で輸出入時に様々な書類や証明書が要求されたり、或いは商品によっては輸出入の禁止に発展している。中には日本の世界での評価がこれほどまで下がったかと、愕然とする事がある。以前であれば輸出時に、このような問題が発生しても決して要求されなかったであろうと思われるような証明書を要求されている。それも日本における証明書の発給元がはっきりして、書式が整っていれば対応出来るが、手探りで自前の書式を作成し、証明してもらえる行政機関先を探す有様である。
輸出入を行なうとき、まずは関税は何%か、特恵関税はどうかをチェックして原価計算をするが、植物防疫法・動物防疫法・食品衛生法などの貿易管理令は、その時々の社会の動き、或いはその政府の政策によっても改正されるので、税関や通関業者にその品目について、事前の問い合わせが大切である。関税のチェックを忘れて、輸入通関時に関税を支払う事になってもお金で解決できるが、法令で規制された商品は廃棄或いは積戻しとなるので十分な注意が必要である。
(貿易ニュース鹿児島2002.2月号掲載)

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